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10 July. 2010 (Sat.)

ティアン。
いや,ピッセイン。
1年Dの②組の男の子。
クーとタエレアンの間に挟まれてぐっすり眠っている。

今日は夜の日本語教室がお休み。
今夜は子どもたちとミーチャーを作る約束をしていた。
19:30 仕事道具をバッグに詰め込み早めに帰宅準備しているところ。
無線で連絡が入る。
「校門のところにまだ下校していない子どもが一人いる」 と。
下校は17:00。
まさかと思いながら行ってみる。

校門の前にはちっちゃなちっちゃな男の子が一人。
宿直当番の6年生の先生がそばにいた。
名前は覚えていないが見たことはある。
確か1年生。

「名前は?」
「ティアン。」
「何年生?」
「わからない。」
「1年生じゃない?」
「うん。」

かろうじて会話になったのはここまで。

「おうちはどこ?」  
「いつもどうやって帰ってる?」
「歩いてる?誰かお迎えに来る?」
「お家は遠いのかな?」
「校門を出たら右に行く?左に行く?」
「担任の先生の名前は?」
「ノートの名前を見せてほしいのだけど,カバンはどこにある?」
「お母さんの電話番号わかる?」
「兄弟はいるの?」
「お腹すいたよね。何か食べた?」

全ての質問に
「わかんない。」
と答える。

周りにいた近所の大人たち。
「この子は記憶がおかしくなったんだよ。」
「さっきから何を訊いても 『わからない』 ばかり。」
「なんにも覚えていないんだから。」
「迷子で帰れないのに泣きもしないとはどういう子なんだ?」
そんなふうに言って,どんどん人が集まってきてしまった。

「ティアン,私のこと知ってる?」
「知ってる。」
「だぁれ?」
「ネアックルーちぃ。」

これにはみんながびっくりした。
周りの野次馬たちも苦笑い。

記憶喪失ではない。
何か事情があるのか。
校長に無線で連絡を入れる。
もう夜の8時。
とりあえず私の家に連れて行って食事をとらせることにした。

超特急でミーチャーを作る。
その間にクーとタエレアンが彼を水浴びさせてくれた。
クーの服を着て嬉しそうににっこりするティアン。
マーリッやタエレアンに優しく話しかけられ,少しずつ話すようになってきた。
私は聞こえないふりをしてご飯支度。
耳はダンボ。

「お父さんとお母さんは2人とも家にいる?」
「うん。」

「お仕事は何してるの?」
「してない。病気だから。」

「2人とも病気なの?」
「お父さんは家にいないからわからない。」

「お母さんに会いたい?」
「うん。」

「兄弟は?」
「いない。」

「いつも食事はお母さんと食べるの?」
「食べない。」

「ご飯食べないの?」
「食べたことない。」

「だれが作ってくれるの?」
「おばさんが作ってくれる。」

「じゃあ,おばさんと食べるんだ?」
「食べない。」

支離滅裂な会話。
この嘘だらけの話はどこからくるものなのか。

学校で話したときに彼の身体はチェックしていた。
身長はかなり小さいが,肉付きは悪くない。
しっかり食べている感じがした。
気になったのは肌。
暗くてよく見えなかったが,腕も足も6歳の少年とは思えないほどガサガサだった。

ミーチャーができてみんなで食卓を囲む。
手をあわせて一同「い~た~だ~き~まッす!」
ティアンは驚いてくすくす笑う。
マーリッが優しく話しかける。
クーが横でせっせと世話を焼く。
タエレアンが彼を笑わせようとギャグを連発させる。

少し馴染んできた頃,ようやく担任と思われるサーヴェー先生がやってきた。
「1年生」と「ティアン」という名だけが手がかり。
校長・教頭が調べてくれたのだが。
1学年約1,000名16クラスから探し出すのは,なかなか時間がかかった。

サーヴェーは家に入ってくるなり不機嫌そうに大きな声で喋り始めた。
「あんたはなんでこんなとこにいるの!」
「なんで家に帰らないの!」
「自分の家が分からないなんて!」

予想はしていたが…
自分のクラスの子が 『心配』 という感じが全くないことにがっかり。
普段はとても感じのいい20代のサーヴェー。
冗談が好きでよく笑って,何度も一緒に遊びに出かけたことがある。
教員としてはまるで別人。
「自分にも小さな子どもがいるのに!
なぜこんな時間に出てこなくてはいけないの!」
誰にともなく文句を言う。

「あんた,ティアンじゃないでしょ!なんで嘘つくの!」
これには驚いた。
本当の名前はピッセイン。
同じクラスのティアンという子の名を名乗っていたらしい。

学級ではどういう子なのかサーヴェーに尋ねる。
「私にわかるはずがない。産休から復帰してまだ3ヶ月だよ。」
友達はいるのか,出席状況はどうなのか。
そんなことも把握していない。
彼女は非常に感情的になっている。
だれもサーヴェーを攻めているわけではないのに。
子どもの前で言い訳のようなことを延々と話し続ける。

「今は今夜この子をどうするかを考えるのが先ではない?」
そう彼女のマシンガントークを遮った。

担任に引き取らせる。
そう思っていた。
子どものためというより,担任に自覚をもってほしかったから。

「今夜はサーヴェー先生のところに泊めてもらおうね。
同じくらいの男の子がいるから一緒に遊べるよ。
明日日曜だからゆっくりお家を探そうね。」
そう言ってみた。
ピッセインは下を向いたまま何も答えない。

サーヴェーがむきになって言う。
「私と一緒に行くよ!
行きたくないの!?
ほら,ちゃんと先生の方を見なさい。
先生のこと知ってるでしょ!?
名前はわかる?」

「知らない。」
椅子にしがみついてぼそりと答えた。

「じゃあこっちの先生は知ってるの!?」
「ネアックルーちぃ。」
サーヴェーは絶句状態。

「サーヴェー先生のところに行けるかな?」
ピッセインに尋ねる。
椅子を握った手にさらに力がこもる。

サーヴェーが尋ねる。
「ネアックルーちぃのところにいたいの?」
「バー」
小さく答えた。

優先順位は担任を育てることではない。
まずはこの子を救うこと。
私が間違っていた。

「よし,じゃあ今日はここで一緒に寝よう!」

サーヴェーはホッとしたようにさっさと帰っていった。

我が家の子どもたちはとってもあたたかく迎えてくれている。
それだけが救いだ。

寝る前,一緒に水浴びをした。
ピッセインの肌のガサガサ。
ほとんど水浴びをしたことのない身体。
石鹸でブクブクになってキャッキャと笑う。
洗いながら,彼の身体が傷跡だらけであることが分かった。
やっぱり…
イヤな予感。

今日は質問はもうやめよう。

明日は日曜日。

親はいるのだろうか?
子どもが帰らず心配しているだろうか?

我が子を想い眠れない夜を過ごす親が…
ピッセインにそんな親がいることを願う。




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[ 2010/08/04 18:26 ] 日記 2010 | TB(0) | CM(0)
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